宮城県株式会社のケース(6)vol.117

「例えば、経営者や管理者が、使用人から不当と思われるほど労働力を搾取するような態度をとってしまうと不満を呼び、働きが悪くなります」

(?)
「だから、同業他社の給与をベンチマークして高い水準の給与を準備しました。だいたい、標準の1.3倍といったところです」

(??)
「また、投資不動産を用意しました。これらはインカムゲインの現金収入をもたらすだけでなく、取引銀行に担保として差し入れています。いざという時の資金調達……」

さすがにあなたは【法人】のトークをストップさせた。今の話と『市場における自社戦力の留保』とが、どう結びつくのか見当もつかなくなったのだ。

市場における自社の戦力といえば、製品の性能だとか、ビジネスコンセプトの勝負になると思う。社員に標準以上の給料を支払っていることが、市場へのアピールポイントになるとはとても思えない。

(ひょっとして、この【法人】がいう「市場」とは業界マーケットのことでなく、株式市場のことだろうか?)

仮にそうだとして、株価に好影響をもたらすかといえば、はっきり言って効果なしではないかと思う。

あなたはキャッシュフローのことは詳しくないが、今の事例だけを見れば、フリーキャッシュフローのマイナス要因を並べているにすぎない。

やはり、【法人】に一方的なトークを展開させるよりも、あなたが介入したほうがよいだろう。

話をさえぎられた【法人】は、いったい何なのだ? という表情であなたの顔を見守っている。

空気を読むのが不得意なエリートが、自分の論説についてこられない聴衆に不可思議さを感じているような表情は、きっとこれに近いのかもしれないと、あなたはふと思った。

《続く》

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