岩手県株式会社のケース(10)vol.102

岩手社程度の規模では、格下と考えて横柄に接触してくる相手は確実にいると見なければならない。
しかし、それらの対応に振り回されるようでは、なんのための救済策かわからなくなる。

つまり、ホームページはたくさんの人に読んでほしいが、それを見て連絡してくる相手の数と質は、徹底的に絞り込みたいのだ。

(そんなわがままな作り方ができるだろうか?)
広告代理店に頼めば、ある程度までそのニーズに対応できるノウハウを持っているに違いない。

だが、広告代理店を利用する企業や商店が「ある程度、有料顧客の絞り込みができるサイトが欲しい」といっても、本質的に「できるだけ多くのお客さんを得たい」というニーズが底辺に存在する。

今回開設するホームページのミッションはそれとは全く違うので、結局は独自アイデアを入れながらサイトを作成する必要があるだろう。

当然、試行錯誤が必要だと思うが、岩手社のメンバーはいずれもパソコンには詳しくない。
サイトの作成に対しても関心がないので、【法人】の誘導無しで実行するのは極めて困難だ。

しかし、あなたが岩手県株式会社という【法人】に会えるのは、おそらくこれが最初で最後だろう。

状況を見て次の手を考えるといった継続的なフォローはできないため、答えはこの一回の面談で出し切らねばならない。

できるならば行動療法系のカウンセリングのように、『契約』で複数回の面談を約束したいところだが、あなたの仕事はそういう性質のものではないし、相手は「人」ではあるが「人間」とは言えない存在なので、そういった常識的な手法は通用しない。

今、こうしている間にも、オヤジさん達は圧倒されるほどの注文数をこなすため、休みなく手を動かし続けている。

こんな状態でもオヤジさんは、「製品に罪はない」とばかりに、丹念に一つひとつ作り続けているのだろう。将来、嫁に出す娘を手塩にかけて育てる父のように。

急に割り込んできてワガモノ顔で、他のお客さんの仕事にかける労力を奪い取って拡張を続け、岩手社の命脈を奪わんとしている『ビールの指輪』が、あなたにはガン細胞のようにすら思えてきた。

(『下町の名工』を何とか救わなければならない)
解決策を求めて、あなたの思考はさらに深部へ入り込んでいく。

《続く》

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